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白石に伝統の技が光る
日本刀鍛錬職人<後編>

日本刀鍛錬職人 日本刀鍛錬職人クリックで拡大
前回、刀鍛冶職人(刀匠)の宮城さんの御自宅にお伺いしてから数日後に、今度は仕事場でもある工房にお邪魔しました。白石の大鷹沢の山中にあり、御自宅から5キロほど離れています。何度か道に迷いながらようやく到着することができました。実は小生、少し緊張をしており、それは一度刀鍛冶の現場を見学することが夢だったわけで...。しかも、本日は仕事場に滅多に来ることがなくなった、お父様であり、師匠でもある昭守さんが特別に刀鍛冶の工程の一部を披露していただけるという幸運に恵まれたのです。
日本刀鍛錬職人 日本刀鍛錬職人
前編で書くのを忘れてしまったのですが、御自宅で典真さんから日本刀を持たせて頂きました。重さは1sほどでしたが、ズシリと手応えがありました。鞘から抜かれた抜き身は余りにも美しく、思わず息を呑みました。
「日本刀は折れず、曲がらず、よく斬れる。の三拍子揃ったものが良い品」と典真さんは言います。硬すぎては折れてしまい、軟らかすぎては曲がってしまいます。日本刀はこの相反する条件をかね備えた究極の一品といえるでしょう。
日本刀
さて、お話を工房見学に戻します。中に入ると昭守さん、典真さんのお二人に迎えていただきました。仕事場ではお二人は仕事着を着ており、御自宅でお会いした時とは別人のようでした。特に昭守さんの眼光は鋭く、その全身から立ちこめる気迫に小生はおろか、同行したわかちゃん(生粋の白石人)も圧倒されたようでした。工房内には、鋼を鍛錬する時に使う鎚や、物を掴む時に使う平箸
工房見学 工房見学 工房見学
など整然と置かれていました。日本刀が完成するまでに、約30種類の道具が必要との事でした。典真さんが1,300℃まで達するとという火床(ほど:鋼を溶かすための炉)に点火しました。
工房見学 工房見学
オレンジ色から真っ赤な火に変化していくさまは、まさに炎の芸術といえるほどでした。鍛造機(機械ハンマー)や小鎚
工房見学
で鋼をたたく音は、リズム感にとみ、心地よいものでした。
典真さんが製作途中の日本刀を見せてくれました。まだ、刃などは入ってませんでしたが、前回、真剣を持たせて頂いた感覚が蘇りました。最初に日本刀の元になる玉鋼(たまはがね)を見せて頂きましたが、それがこのような形に変化することが、想像できませんでした。
玉鋼 玉鋼
さらに、典真さんは刀匠の世界や歴史についても話してくれました。
以前、刀匠を目指す人達はその師匠に弟子入りして日本刀製作の技術を学び、習得しました。それからその技量に見合った仕事を与えられ、すべての工程が出来るようになったら、独立することができました。中には独立をしない人もいましたが、生活をしていくことは出来たそうです。また、単独では刀鍛冶はできないので、3〜4人体制で行われており、その刀匠の子供や親戚などで構成されていました。
日本刀製作
戦国時代に侍は戦に刀匠も帯同しており、高い地位についていたとのこと。戦場では、曲がった刀等の武器を修理していました。しかし侍同様、戦で命を落としてしまうことも多かったようです。

典真さんに日本刀造りの難しさについても質問してみました。 「日本刀は刀匠それぞれの個性が出やすい。自分の体調にも影響されやすく、二度と同じものを作ることができない」と話してくれました。
まさに、それは全身全霊を傾けた、真剣勝負といってよいでしょう。
日本刀造り
「夏は鋼が冷めにくいので、作業がしやすくて楽だが、室内が高温になるので大変。
逆に冬は冷めやすいので温度管理が難しい」と典真さんは過酷な仕事場のことを話してくれました。
典真さん
後に典真さんは言いました。「日本刀造りは、大変な重労働。だけど刀の一部に自分の名を刻むことで、後世に残すことができる」と。
日本刀は手入れを怠らなければ何百年もその輝きを失うことはない。
日本刀
日本刀製作にかかる費用は100万円から。
修理やメンテナンスについても御相談承りますとのことです。
日本刀製作
工房を出た頃には夕暮れになっており、オレンジ色に輝いた名峰不忘山をくっきりと見ることができました。

日本刀の製作工程

1 玉鋼を加工する
刀の原料である玉鋼を熱し、水焼入れをしながら薄く、平らに延ばします。
不純物も取り除きます。1sの刀を作る為に、8〜10sの玉鋼が必要となります。
玉鋼を加工する 玉鋼を加工する 玉鋼を加工する 玉鋼を加工する ※玉鋼とは
砂鉄を原料とした「たたら製鉄」により造られる和鉄。宮城さんの工房では島根県の奥出雲町から取り寄せます。
玉鋼を加工する 玉鋼を加工する
2 小割り、選別
良質な鉄を選別し、軟らかい鉄と硬くてきれいな鉄に分けます。軟らかい鉄は「心鉄(しんがね)用」硬い鉄は「皮鉄(かわがね)用」となります。

3 テコ棒とテコ台
火床(ほど:炉のことです)の中で鋼を熱するために、テコ棒を使用します。テコ台はそのその棒の先が台となっており、テコ棒、テコ台と共に玉鋼でできています。台の上に心鉄用と皮鉄用の玉鋼を積み重ねます。
テコ棒とテコ台 テコ棒とテコ台
4 火入れ
新聞紙を使い、炭に着火をします。炭は松を使用。高温になりやすい特性があります。
火入れ 火入れ
5 テコ台と玉鋼を鍛接させる
鞴(ふいご)を使い空気を入れて火床の温度を上げます。火床の中に玉鋼を重ねたテコ台ごと熱します。するとテコ台ごと玉鋼が溶け、ひと塊りになります。約1,300℃まで上げていきます。
テコ台と玉鋼を鍛接 テコ台と玉鋼を鍛接 テコ台と玉鋼を鍛接
テコ台と玉鋼を鍛接
※鞴とは
鍛冶屋さんが火をおこすのに使う送風機。長方形の箱の中のピストンを動かして人力で風を送る。

6 折り返し鍛錬する
真赤に焼けた鋼を鍛造機(機械ハンマー)でたたきます。その後、切れ目を入れて折り返し、また火床の中で熱し鍛造機でたたき、これを10数回繰り返します。何度も鍛錬することで、不純物を取り除いていきます。
折り返し鍛錬 折り返し鍛錬 折り返し鍛錬
折り返し鍛錬
〜以前は3人がかりで行っていた作業を機械化することで、一人で出来るようになったとのことでした。〜

7 皮鉄造り、心鉄造り
日本刀は「折れない」「曲がらない」「よく斬れる」という3つの条件を満たさなければなりません。そのため刃の内部は軟らかい心鉄を、表面は硬い皮鉄を使います。
皮鉄造り、心鉄造り
8 造り込み
皮鉄をU字形にし、心鉄に包み込むように組み合わせます。
造り込み
9 素延べ
心鉄と皮鉄が組み合わさったものを再度火床の中で熱し、慎重に平たい棒状へ打ち延ばしていくと、刃の原型が出来てきます。この作業を繰り返します。
素延べ
10 火造り
次に、刀の長さに従って先端を斜めに切り取ります。それから火床で加熱させ、小鎚でたたいて切先を打ち出していきます。日本刀としての姿にするために、小鎚を使い何度も鍛錬していきます。
火造り
11 やすりがけ、センがけ
やすりとセンという道具で、表面が平らになるように削り整えます。

12 土置き
焼刃土(粘土に細かくして炭・砥石を混ぜたもの)を刀身に塗ります。薄いところと厚いところをメリハリをつけて塗ることでその差が「刃紋」となります。
土置き 土置き
13 焼き入れ
火床の中に刀身を入れ、約800℃まで温度を上げて熱していきます。そして頃合を見て水に入れて急冷します。ここはやり直しがきかない、一番重要な作業であり、夕方の辺りが暗くなり始めた時に行います。それは、刀身の焼き入れに必要な温度になっているかどうか、赤くなった色を見定めるためです。
焼き入れ 焼き入れ
14 仕上げ
曲がりや反りを直し、全体を整えます。
15 鍛冶研ぎ
砥石で刀を研ぎます。
鍛冶研ぎ
16 茎(なかご)仕上げ
茎(中心とも書く)にやすりをかけて整え、目釘穴を入れます。

※茎とは
刀身のなかで、柄に収まる部分。
茎(なかご)仕上げ
17 銘切り
茎に作者名を入れます。宮城さんが、「後世まで名前が残る」と話されたのが印象的でした。
銘切り
その他、刀の鞘を作る<鞘師>、金具を作る<金工師>、柄を巻く<柄巻師>等、様々な職人が担当します。

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